外国人居留地の様な街路の電燈の柱に、
あなたののうかんもとろけるけしのみいりのべるぎーわっふるにんぎょうやきのみせはこちら
∵→
と段ボールに貼られた白い紙に太字のマジックで書かれビニールにくるまれた即席看板が、
梱包用のビニール紐で手荒く、くくりつけられているのが見える。
その字は、あの宮沢賢治の「どんぐりと山猫」の山ねこの様な、字はまるでへたで、墨すみも
がさがさして指につくくらいの頑張れボンクラ的な筆致だが、よく見ると文字の最後にそこだけ
何故か金色で逆三角形で3つののドングリの印らしきものが書かれている。
その店の前に来ると品物が数種類ある。偽物が混じっている。箱が明らかに偽物だ。
偽の店舗に誘導されて困ったのは、怪しげなその店頭で本物の箱が混ぜられて売られている
ことだ。
裏側に貼ってある製造者が書いてある部分をみれば、中身が本物かどうかが解るだろうが、
店先に座った形で陣取った店主が上目遣いで睨んだので、裏返して中身が偽物か確認する
勇気も消え去る。
その時、後ろから肩を叩かれたので見ると、着ている服もバリッとしていて裕福な外国人の紳士
が右後にいる。その後ろに高そうなベンツが見える。
「これを毒見してくれないか。先ほど、その店で買ったものだ。」とニコニコしながら言う。
箱は本物の箱だ。躊躇していると、今度は左肩を叩かれたので、見ると、中年男性が2人いる。
「それの代替。それと同じ店で買った。これも。」 箱は本物だが、中身は分からない。
「ついでにこれも。」 もう一人の中年男性の持っている箱は偽物だ。
「ウチ等のシステムの身代わりということで、あとはよろしく。」
結局、出口を塞がれてしまったため、仕方なく3人がそれぞれの中身を出すのを待つしかない。
所詮、外国人居留地の極めて怪しい店に誘導されて、そこの店頭販売品を何故か謎の3人の
他人の代理で毒見する、これは夢なのだから、仕方が無い。覚醒する機会を待つしかない。
外車紳士に箱の裏を見せてもらったら、確かに本物の製造者名が書かれていたので、それから
試食することにする。確かに宣伝文句に従うしかない味である。箱も中身も本物である。
次に代替である。食感も異質で、裏を見せてもらったら、どうやら箱だけを調達した偽物である。
最後についでの品である。咽る程の代物である。
3人はこちらが咽ているのを見ながら早速、満面の笑顔で偽物の品々を黒いビニール袋に放り
込んでいき、煙の様に視界から消える。
苦しい。不条理だ。この不条理の理由は一体何なのか。息が出来ない。
目が覚めた。
夢だった。